現代短歌社

アララギの系譜

横山季由

アララギの系譜

「全体について申しますと、非常に下手だ。これがアララギの詠草だといって世間に出せますか」。
土屋文明は亡くなる二年前、歌会でこう慨嘆した。
アララギの唱導した写生とは、リアリズムとは、何だったのか?
子規の改革からアララギ終焉まで、流れ続けた水脈を、豊富な文献を渉猟しつつたどった労作。

  • 定価:2,600円(税別)
  • 判型:四六判ソフトカバー
  • 頁数:286頁
  • ISBN:978-4-86534-310-6
  • 初版:2020年3月26日
  • 発行:現代短歌社
  • 発売:三本木書院

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BR書評 Book Review

土屋文明以後 大辻隆弘

 アララギの歌人たちを大きな流れの中で捉え直そうとした一冊である。「写生」「万葉集の受容」「生活即短歌」という大きな論点に即して、子規以降の歌人を見つめなおすことが主眼となっているが、そのなかでも特に土屋文明に対する深い考察が印象的である。
 横山は文明のことを「子規、左千夫、赤彦、茂吉等々アララギの系譜に連なる人々の総合商社」として位置づけ、それまでのアララギの作歌に対する理念が文明において総括されたと捉えている。例えば、子規が提唱した客観写生の理念は、左千夫や茂吉の主情的な写生論によって歪曲されてしまうが、文明は子規に回帰しようとし「即物的な描写」によって「写生」をより先鋭化させてゆく。また、大著『万葉集私注』によって、それまでのアララギが蓄積してきた実作者視点に立った万葉集受容のあり方を集大成していく。さらに、左千夫の「生活即ち歌」という理念を「生活の表現は直ちに作者其人」という考え方にまで深め、戦後アララギの生活詠に道を開いてゆく。 横山はこのように文明という存在をアララギの集大成として位置づけるのである。とても説得力のある巨視的な文明像だと思った。
 私個人としては、文明以後のアララギ歌人たちに焦点を当てている所が興味深かった。山口茂吉、吉田正俊、柴生田稔、落合京太郎、中島榮一、小暮政次、五味保義、清水房雄、宮地伸一、小市巳世司といった人々の横顔は生き生きとしていて、横山が楽しみながら論を進めたことが窺える。
 また横山は、アララギ終刊の原因を「文明時代からの硬直した時代感覚のズレ」のなかに見てとっている。自らアララギに身を置いたその苦い認識は、正鵠を射ており胸に迫る。力のこもった好著である。


(現代短歌新聞2020年6月号掲載)

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